システム開発を成功させるためには、プロジェクト全体の流れを把握することが欠かせません。初めて発注を担当する場合、どのような工程を経てシステムが完成するのか不安に感じる方も多いはずです。
本記事では、要件定義から検収に至るまでの各ステップを網羅的に解説し、円滑な進行のためのポイントをまとめました。受託開発会社の開発手法や契約形態の選び方など、発注者が知っておくべき基礎知識についても詳しく触れています。
リリース後の運用保守やトラブル回避策まで理解を深めることで、開発会社との健全な協力関係を築けるようになるでしょう。プロジェクトの全貌を掴み、ビジネスの成功を支える高品質なシステムを実現してください。
システム開発の基礎知識
受託開発会社への依頼を検討する際は、まずその基本的な仕組みや種類を正しく理解しておくことが重要です。基礎知識を以下の4つにまとめました。
- 受託開発とは?自社開発・オフショア開発との違い
- 開発手法の選び方は?ウォーターフォール開発とアジャイル開発
- 請負契約と準委任契約の使い分け
- 発注者と開発会社の役割分担(責任共有モデル)
プロジェクトの目的や予算に合わせて、最適な手法と契約を選択するための土台を固めましょう。
受託開発とは?自社開発・オフショア開発との違い
受託開発とは、専門スキルを持つ外部企業へ開発を委託してリソース不足の解消と品質向上を両立する手法です。スピード重視の自社開発やコスト重視のオフショア開発と比較し、使い分けの基準を明確にすることが成功への第一歩です。自社のビジネスゴールに基づき、リソース、コスト、スピードの観点から、どの形態が最も投資対効果が高いかを多角的に検討しましょう。
開発手法の選び方は?ウォーターフォール開発とアジャイル開発
最初に全ての要件を固めて計画通りに進めるウォーターフォール型は、大規模システムや品質重視の案件に適しています。一方で、機能を分割して開発を繰り返すアジャイル型は、市場変化に合わせた柔軟な仕様変更に有効です。
それぞれの特徴を表で比較しました。
比較項目 | ウォーターフォール開発 | アジャイル開発 |
開発の進め方 | 工程を一つずつ完了させて進む(後戻りしない) | 小さな単位で「計画・開発・テスト」を繰り返す |
要件定義 | 最初に全ての仕様を詳細まで固める | 優先度の高いものから順に固めていく |
柔軟性 | 低い(途中の仕様変更が困難) | 高い(状況に合わせて柔軟に変更可能) |
リリース時期 | 全ての開発が終わった最後 | 優先度の高い機能から段階的にリリース可能 |
向いている案件 | 基幹システム、金融系など品質・納期重視の案件 | 新規事業、Webサービスなど市場変化が速い案件 |
発注者の関わり | 各工程の節目での確認がメイン | 頻繁な確認とフィードバックが求められる |
プロジェクトの不確実性や納期、予算の性質に応じて、リスクを最小化できる最適な開発手法を選択してください。
請負契約と準委任契約の使い分け
成果物の完成を約束して契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任)を伴う請負契約は、要件が明確な開発に向いています。対して、業務の遂行プロセスに対価を支払う準委任契約は、要件が流動的な研究開発や保守運用で選ばれるのが一般的です。開発フェーズごとに契約を使い分ければ、発注側と受注側の双方で公平なリスク分担が可能となります。
発注者と開発会社の役割分担(責任共有モデル)
発注者はビジネス上の目的を定義し、最終的な意思決定を下すという重い責任を担います。対して開発会社は、技術的な手段の提案とプロジェクト進行管理を行い、高品質な成果物を生み出す専門性が求められます。双方が共創の意識を持ち、役割の境界線を明確にすることで、丸投げによる失敗を防ぐことができるでしょう。
【準備~設計】失敗しないための開発ロードマップ
開発を成功させるための準備段階では、自社の要望を正しく言語化して伝える作業が不可欠です。後戻りのない設計を実現するために、準備から設計への各フェーズで確認すべきポイントをまとめました。
- RFP(提案依頼書)作成|失敗しないパートナー選定のポイント
- 要件定義|ビジネス要求をシステム仕様に落とし込む際の注意点
- 外部設計|UI/UXとユーザー操作性を確認
- 内部設計|発注者が把握すべき範囲
1.RFP(提案依頼書)作成|失敗しないパートナー選定のポイント
開発背景や予算、非機能要件などを明文化したRFPを作成すれば、要件に合致した精度と熱量の高い提案を引き出せます。選定時は技術力だけでなく、実績やコミュニケーションの相性を客観的な評価軸で判定することが重要です。要望を正確に伝えることは、開始後のコスト膨張やスケジュール遅延を防ぐ強力な鍵となるでしょう。
2.要件定義|ビジネス要求をシステム仕様に落とし込む際の注意点
業務フローを可視化して、システムで実現するスコープを網羅的に決定することがこの工程の目的です。現場のニーズと経営層の目的を擦り合わせ、実装機能には明確な優先順位を付けてください。非エンジニアの発注者でも理解できる言葉を用いて確認を行い、認識の齟齬を徹底的に排除しましょう。この丁寧な合意形成が品質を左右します。
3.外部設計|UI/UXとユーザー操作性を確認
画面遷移図やモックアップを確認し、利用者が直感的に操作できるデザインや使い勝手を検証します。実際の業務シナリオを想定しながら、必要な入力項目や出力帳票に漏れがないかを入念にチェックしてください。視覚的なインターフェースで早い段階から合意しておけば、後の工程での手戻りリスクを大幅に削減できます。
4.内部設計|発注者が把握すべき範囲
データベース構造やシステム間連携など、将来の拡張性に直結する技術方針を確認しておきましょう。セキュリティ対策やレスポンス速度などの非機能要件が、設計レベルで具体化されているかのチェックも欠かせません。技術スタックを把握しておくことは、将来のメンテナンス性や、自社IT資産としての透明性を確保することに繋がります。
【開発~検収】スムーズなリリースを実現するロードマップ
設計が完了した後は、実際の形にしていく実装から最終的な確認を行う検収へと進みます。
- 実装(コーディング)
- 結合テスト・総合テスト
- 受入テスト(UAT)
- 検収と支払い
- リリース(本番移行)
品質を担保しながら予定通りリリースを迎えるための、重要なチェックポイントを確認してください。
1.実装(コーディング)
設計書をプログラムに変換し、各機能が単体で正しく動くかをテストしながら進めていきます。発注者は定期報告を受け、スケジュール遅延や重要な技術課題が発生していないかを常時監視しましょう。コード品質を保つために、開発チーム内での相互レビューや自動テストツールの活用を徹底させることも大切です。
2.結合テスト・総合テスト
複数の機能が連携し、外部システムと意図通りにデータを受け渡しできるかを網羅的に検証します。本番に近いデータ量や接続数での負荷テストを行い、システムの安定性と性能をしっかりと確認してください。全ての不具合が解消されたか、あるいは許容範囲内であることをテスト結果から証跡化することも必要です。
3.受入テスト(UAT)
発注側の実務担当者が主体となり、実際の業務フローに従ってシステムの操作性や実用性を最終確認します。要件定義で合意した内容が漏れなく実装され、ビジネス要件を満たしているかを厳しく判定してください。マニュアルを見ながら操作できるか、エラー表示が適切かといった点も重要なチェック対象となります。
4.検収と支払い
受入テスト合格をもって検収完了とし、成果物が契約通り納品されたことを公式に認めます。検収完了報告書を交付することで、所有権の移転と契約に基づいた支払い義務が確定する流れです。
なお、検収後に発見された不具合(契約不適合)については、契約書に定める保証期間内において無償改修を請求できます。その際、瑕疵担保責任をバックアップする第三者保証機関(瑕疵担保履行機関)への加入有無について、契約内容をご確認ください。万が一の際の補償範囲や対応フローを事前に把握しておくことが重要です。
5.リリース(本番移行)
旧システムからのデータ移行を正確に行い、サービス停止時間を最小限に抑えて切り替え作業を実施します。万が一の重大トラブルに備えて、旧環境へ戻すロールバック手順を事前に準備しておくことが不可欠です。利用者への告知やヘルプデスクの稼働を開始し、円滑なシステム利用を全面的にサポートする体制を整えましょう。
【リリース後】運用保守と改善・内製化
システムはリリースして終わりではなく、その後の継続的な管理と改善が真の価値を生みます。リリース後に重要な運用や保守に関することを解説します。
- 運用保守(メンテナンス)
- バグ修正と追加開発(フェーズ2)
- 設計書やマニュアルの整備と知財権の確認
- 将来的な「内製化」を見据えた受託開発の進め方
安定稼働を維持しつつ、将来的な内製化も見据えた長期的な運用体制のあり方を検討しましょう。
運用保守(メンテナンス)
サーバーの常時監視に加え、OSやライブラリのセキュリティアップデートを定期的に実施していきます。障害発生時の緊急対応フローを確立し、ビジネスへの影響を最小限に抑える迅速な復旧体制を維持してください。定期的なバックアップやアクセス解析を通じて、システムの健全性を長期的に維持することが大切です。
バグ修正と追加開発(フェーズ2)
リリース後のユーザー意見を集約し、操作性の改善や不足していた小規模機能の追加を計画的に進めます。マイナーな不具合を修正しつつ、環境変化に対応するためのプログラム最適化を継続してください。次期大規模アップデートに向けては、投資対効果に基づいた優先順位付けを再度行うことが重要です。
設計書やマニュアルの整備と知財権の確認
最新の仕様を反映した設計資料を更新し、開発会社が交代しても運用を継続できる体制を整えます。著作権の帰属やソースコードの利用条件を改めて確認し、知財に関する法的トラブルを未然に防ぎましょう。分かりやすいユーザーマニュアルを完備し、業務担当者が独力で習熟できるように支援します。
将来的な「内製化」を見据えた受託開発の進め方
開発会社から自社の担当者へ、技術的な知見を段階的に移管する機会を設けます。将来の内製チームが管理しやすいよう、標準的な技術スタックやコーディング規約を採用することが賢明です。外部パートナーと協力しながらコアなノウハウを蓄積し、内製と外注のハイブリッド体制を目指しましょう。
受託開発でよくあるトラブルと回避策
プロジェクトには様々なリスクが潜んでいますが、事前の対策で多くのトラブルは回避可能です。よくあるトラブル事例を4つ紹介します。
- 【仕様変更】「言った言わない」を防ぐ変更管理ルールの徹底
- 【納期遅延】遅れを早期に察知するためのアラート設定
- 【追加費用】見積もり乖離を防ぐための「バッファ」の考え方
- 【疎通不足】エンジニアとの共通言語を作るコミュニケーション術
円滑なコミュニケーションを支えるルール作りを行い、開発を成功へと導く環境を整えてください。
【仕様変更】「言った言わない」を防ぐ変更管理ルールの徹底
口頭での指示は避け、チャットや課題管理システムを用いて全ての合意を履歴として残す工夫をしましょう。変更がコストや納期に与える影響を都度算出し、承認なしに作業を開始させないフローを厳守します。定例会議の議事録を迅速に共有し、意思決定の背景を双方が確認し合う文化を構築することが肝要です。
【納期遅延】遅れを早期に察知するためのアラート設定
スケジュールを週単位のタスクに分解し、進捗率をリアルタイムで可視化することが有効です。遅延の兆候が見られた際は即座に原因を共有し、早期に対策を講じられる体制を整えておきましょう。情報の透明性を高め、心理的安全性を確保することで、事前に問題の芽を摘んでください。
【追加費用】見積もり乖離を防ぐための「バッファ」の考え方
要件が不明確な初期段階の見積もりには、不確定要素への予備費をあらかじめ予算に組み込んでおきます。予算の上限を意識し、超過が予想される場合は機能削減や代替案を早期に検討することが大切です。契約外となる作業範囲を明確化し、何が追加費用になるかを事前に合意しておきましょう。
【疎通不足】エンジニアとの共通言語を作るコミュニケーション術
専門用語をビジネス用語に置き換えて説明を求め、図解やホワイトボードを活用してイメージを共有します。チャットやWeb会議で気軽に相談できる環境を作り、些細な疑問を放置せずその場で解消する習慣をつけましょう。開発チームを同じ目標を目指すパートナーとして尊重し、意欲を高める関わりを意識してください。
まとめ
システム受託開発会社への依頼を成功させるためには、要件定義から検収、リリース後の運用まで、各工程での役割と注意点を理解することが不可欠です。開発手法や契約形態を適切に選択し、RFPによる丁寧な合意形成を図ることで、トラブルのリスクを最小限に抑えられます。
また、開発会社を「業者」ではなく「共創パートナー」として尊重し、透明性の高いコミュニケーションを維持し続ける姿勢が重要です。本記事で解説したロードマップを参考に、ビジネス価値を最大化するシステム開発を推進してください。
【発注担当者向け】システム受託開発の全工程ロードマップ:要件定義から検収までの流れ