スクラムはアジャイル開発の代表的な手法であり、開発効率をアップできるメリットがあります。一方で、デメリットが存在するのも事実です。
本記事では、アジャイル開発におけるスクラムの概要やメリット・デメリットについて詳しく解説します。
最後まで読めば、スクラムについて理解でき、開発の流れも把握できるため、自社に取り入れるべきか判断できるでしょう。
スクラム開発とは?
スクラム開発は、アジャイル開発の手法の一つで、ソフトウェア開発の効率アップのために設計されたフレームワークです。
1カ月以内の短期間で設定された「スプリント」という単位で、計画と実装を繰り返しながら製品を段階的に開発していきます。
スクラム開発は、チームの全員が連携し、顧客からの定期的なフィードバックを受けながら進行する点が、開発フローとしての特徴と言えます。
スクラムの3つの柱
スクラム開発には以下の3つの柱があります。
- 透明性
- 検査
- 適応
「透明性の柱」とは、チーム内で透明性を保つため、すべての作業と進捗が可視化され、関係者全員が理解できるようにする考え方のことです。。例えば、ホワイトボードに進行中のタスクを付箋で貼り出し、誰がどの作業をしているのか一目で確認できるようにする、などの方法を採用して透明性を確保することがあります。
「検査の柱」は、各スプリントの終了時に成果物を検査し、想定通りの開発ができているかを確認する工程や、その進め方の軸を意味します。問題点の早期発見につながり、次の柱である「適応」を行うために必要な作業です。
「適応の柱」は、検査の結果をもとに、必要に応じて計画や作業方法を柔軟に変更する考え方やフローを意味します。。例えば、顧客から「○○の点が使いにくい」というフィードバックを受けた場合、次のスプリントで改善できるように反映させたうえでインターフェースを改善しながら開発することになります。
スクラムの5つの価値基準
スクラムには以下の5つの価値基準があります。
価値基準 | 概要 |
確約(Commitment) | チームメンバー全員で協力して、ゴールを達成することを確約する。 |
集中(Focus) | チームはスプリントに集中し、他の作業に気を取られないようにする。 |
公開(Openness) | 問題や課題を共有しコミュニケーションを取ることで透明性を保証する。 |
尊敬(Respect) | メンバー同士が互いに敬意を持って接し、協力し合いながら作業を進める。 |
勇気(Courage) | 困難な状況に直面しても、勇気を持って対処し、必要な変更を恐れずに行動する。 |
スクラム開発では3つの柱と5つの価値基準を実行することが、開発成功のために重要とされています。
「スクラムガイド」によると、スクラムチームの計画や行動、意思決定などは5つの価値基準に基づく必要があると記載されています。
それぞれの価値基準を実行することで「3つの柱」の実現にもつながります。
出典:「スクラムガイド」
スクラムチームの役割と責任
スクラムチームには以下の3つの主要な役割があり、それぞれが異なる責任を持っています。
- プロダクトオーナー
- スクラムマスター
- 開発者
スクラムチームでは、プロダクトオーナー1人、スクラムマスター1人、開発者数人のチームで開発を行います。
それぞれの役割と責任について詳しく解説します。
プロダクトオーナー
プロダクトオーナーは、開発の責任者という位置づけで、製品の方向性を決定し、チームが取り組むべきタスクを優先順位付けする役割を担います。
例えば、新しいアプリを開発する場合、プロダクトオーナーは顧客や市場のニーズを調査し、「どの機能を最初に作るべきか」を決めます。
また、プロダクトオーナーには以下を実施する責任があります。
- 開発のゴール設定と関係者への伝達
- プロダクトバックログの作成と管理
- ステークホルダーのフィードバックをもとに優先順位の調整
- 製品のビジョンと目標を提供
プロダクトオーナーは、スクラムチームとステークホルダーとのコミュニケーションを担い、開発を円滑に進めるために機能する役割と言えます。
スクラムマスター
スクラムマスターは、スクラムのプロセスがスムーズに実行されるようサポートし、プロダクトオーナーの支援を行うのが役割です。
例えば、チームがデイリースクラムで「この作業に時間がかかりすぎている」と感じた場合、スクラムマスターが原因を特定し、解決策を見つけます。
具体的には、スクラムマスターは以下のような管理を行い、開発成功に向けて支援を行います。
- 課題発見と解決を行い開発が円滑に進むようにサポート
- スクラムをステークホルダーに伝え理解を得る支援
- チーム内の協力とコミュニケーションの促進
スクラムマスターはチームのコーチや教育者としての役割も担い、スクラムを成功させるための支援を実施します。
開発者
開発者は、実際に製品や機能を作成するチームメンバーです。
具体的には、設計からコーディング、テストまでを担当するため、広範囲のスキルが必要となります。
- スプリント目標の設定と達成
- 高品質な成果物の提供
- 専門家としての責任を持つ
開発者チーム内に上下関係は存在せず、3〜7人程度で構成されることが多いです。
スクラム開発のメリット
スクラム開発には、以下のようなメリットがあります。
- 柔軟な要件変更への対応
- 問題の早期発見が可能
それぞれのメリットについて解説します。
柔軟な要件変更への対応
スクラム開発では、短いスプリントごとに成果物を顧客に提供するため、ユーザーの要望に合わせて柔軟に要件変更ができます。
各フェーズを順番に進める開発手法の場合は、終盤で要件変更が発生すると、全体を通した大幅な修正が必要になる可能性もあるため、結果的にコストの増加や納期遅延といったリスクにつながります。
一方で、スクラム開発では、スプリントごとに計画から実装まで行うため、要件変更にも柔軟に対応できます。
問題の早期発見が可能
定期的な検査とレビューを行うことで、問題点やリスクを早期に発見できます。
スプリントの中でバグが見つかった場合、その場で修正し、次のスプリントでテストすることで、大きな問題になる前に対処できます。
スクラム開発のデメリット
一方で、スクラム開発には、以下のようなデメリットも存在します。
- スコープ管理が難しい
- 開発担当に高いスキルレベルが求められる
それぞれのデメリットについて解説します。
スコープ管理が難しい
スクラムでは、柔軟な要件変更が可能な一方で、プロジェクト全体のスコープを管理することが難しい場合があります。
要件が頻繁に変わると、当初計画していた内容から大きく外れることがあり、内容にブレが生じる可能性があります。また、事前に明確な要件を定義しないため、開発の全体像を把握しにくい点もデメリットと言えます。
開発担当に高いスキルレベルが求められる
スクラム開発では、チームメンバーが自己管理し、スプリント内で成果を出す必要があります。そのため、メンバーには高い技術スキルと自己管理能力が求められます。
新しい技術を導入する場合、精通したメンバーがいなければ、プロジェクトがスムーズに進まない可能性や、品質が低下することも考えられます。
スクラム開発を成功させるためには、開発進行に必要なスキルを持っている適切なメンバーを集めることが重要です。
スクラムイベントで見る開発の流れ
スクラムでは、短い期間内で以下のようなイベントを実施することで、開発が進行します。
- スプリントプランニング
- デイリースクラム
- スプリントレビュー
- スプリントレトロスペクティブ
スプリントの概要や、それぞれのイベント内容について解説します。
スプリントの概要
スプリントとは、スクラムチームの開発者が実際に作業を行い、成果物を作る工程全体のことです。
1カ月以内の短い単位で設定され、通常2〜4週間の期間を繰り返し実施します。
スプリントプランニング
スプリントプランニングは、スプリントの最初に行われるイベントで、達成させる目標と必要な作業項目を決定します。
具体的には、スプリント期間や開発の担当者、タスク、スケジュールなどを細かく設定していくイベントです。そして、スプリントバックログ(作業内容をリストアップしたもの)を作成し、実際の作業に移っていきます。
デイリースクラム
デイリースクラムは、毎日行われる短いミーティングのことで、開発メンバーが各自の進捗状況や問題、課題を共有します。
基本的には、15分程度の短いミーティングで実施されるケースが多いです。
デイリースクラムの内容はプロダクトオーナーに共有され、解決が難しい課題がある場合はスクラムマスターがサポートをします。
スプリントレビュー
スプリントレビューは、スプリント終了時に行われるイベントで、チームはスプリントの成果を発表し、プロダクトオーナーやステークホルダーからのフィードバックを受け取ります。
スプリントバックログの内容と相違ないかを確認し、万が一問題が見つかればリリースを先延ばしにして修正を行います。
スプリントレトロスペクティブ
スプリントレトロスペクティブは、スプリント終了後に行われるイベントで、チームはスプリント全体のプロセスを振り返り、良かった点や改善すべき点を話し合います。
見つかった課題や改善点を次回の開発に活かす目的で実施されます。
アジャイル開発に適した開発内容とは?
スクラム開発におけるアジャイルのフレームワークは、要件が頻繁に変わるWebサイトやアプリケーションの開発プロジェクトに向いています。
また、納期よりも品質を優先したいプロジェクトや、要件定義がある程度固まっているものの、残りの要件をプロジェクトの進行に合わせて柔軟に決めていきたい場合にも向いている開発手法と言えます。
まとめ
スクラム開発は、柔軟性と迅速なフィードバックを重視するアジャイル開発の代表的な手法です。
スクラムの基本的な概念を理解し、チーム全員が役割と責任を果たすことで、プロジェクトの成功につながります。
アジャイル開発を実施する際には、オフショア開発と併用することで両者のメリットを受けられ、デメリットをカバーできます。
アジャイル開発では優秀なエンジニアを集める必要があるため、そのぶんの一人当たりコストが高くなりやすいです。しかし、オフショア開発を利用することで人件費を抑えたうえで人材も確保できます。
RIKAI株式会社では、ベトナムでのオフショア開発を実施しており、日本語に対応したエンジニアが多く在籍しています。これまでに500件以上の開発実績もあり、Webシステムやアプリケーションだけではなく、業務システムやSalesforceなどさまざまな開発が可能です。
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