オフショア開発の課題を解決し、スムーズな開発を実現させる方法を解説

2024年8月18日 by
オフショア開発の課題を解決し、スムーズな開発を実現させる方法を解説
ひな


近年、国内のIT人材不足から、中国やベトナムなどを中心に海外の企業に開発業務を委託する、いわゆるオフショア開発が注目を浴びています。さまざまな開発業務を国内よりも安価に行えるメリットを持つオフショア開発ですが、課題も少なくありません。そこで今回は、オフショア開発の概要を見たうえで、代表的な課題やその解決方法についてお伝えします。ソフトウェア開発の外注を検討中で、選択肢のひとつにオフショア開発を念頭に置いている企業担当者はぜひ、円滑な開発を実現するための参考にしてください。 


オフショア開発とは?


オフショア開発とは、業務システムやソフトウェアの開発を海外の企業に委託することを指します。委託する開発業務は、WebサイトやWebアプリケーション、スマートフォンアプリ、データベースシステム、ゲームなどさまざまです。近年では、AIやVR、ARのほか、大規模なデータ処理を行う開発など、高度な技術が必要な開発を手がける開発業者も増加しています。


日本がオフショア開発を委託する国としては、冒頭で挙げた中国やベトナムのほか、インドやミャンマー、フィリピン、バングラデシュなどが一般的です。主な委託方法は、仕様や要件を伝え開発を完了させる請負型契約、開発専用のチームを編成して開発を遂行させるラボ型契約のふたつがあります。


オフショア開発を行う理由はさまざまですが、なかでも大きな理由は、国内に比べ開発コストを抑えられるからでしょう。開発コストを抑えつつ、多くの人材を使い迅速に開発を進められることが、オフショア開発を利用するメリットのひとつです。


オフショア開発の課題


オフショア開発にはメリットが多い一方で、課題がないわけではありません。ここでは、オフショア開発を利用する際に障壁となる課題について解説します。


▶委託先により技術力に大きな差がある


オフショア開発の委託先として多いのが中国、ベトナム、インド、ミャンマーといった国々ですが、それぞれの国におけるエンジニアの平均的な技術力には差があります。たとえば、中国は世界でも指折りのIT大国と言われる国に成長しています。AIやビッグデータの解析といった先端技術は世界各国が注目をしています。


ベトナムでは国がエンジニア育成に積極的な取り組みを行っており、ITエンジニアの技術力も向上しています。一方で、経験の浅いエンジニアも少なくありません。

国によってITエンジニア育成に関する事情は異なり、平均的な技術力も異なるため、事前に調べていくことが必要です。


また、オフショア開発を委託する先の企業についての情報を詳しく知っておくことも重要です。

例えば、企業内のトラブルや不祥事といったマイナスイメージにつながる情報は日本に届かないこともあります。求める成果を得るためには、委託先の選択を慎重に行う必要があるでしょう。


▶コスト削減につながらない場合がある


技術力の低い開発業者に開発を委託してしまうと、何度も修正や改修を行うことになり、無駄な手間やコストが発生するでしょう。そうなれば、コスト削減を目的にオフショア開発を行ったにもかかわらず、最終的にはコスト高になってしまう場合もありえます。


▶うまくコミュニケーションがとれない場合がある


日本と海外では文化も言語も異なるため、日本企業に委託しているときと同じ感覚でやりとりをしていると、望む結果を得られない場合があります。


▶業務の引継ぎができていない場合がある


国によっては、技術力が身につくとキャリアアップを目指し転職するケースが日本よりも多い場合があります。そうなれば、担当者が頻繁に入れ替わるうえ、引継ぎが不十分な場合は手間とコストばかりがかかってしまうリスクも考えておかなければなりません。


オフショア開発を円滑に行うための方法


国が違えば、文化や働き方などすべてがまったく同じではありません。日本とは異なる環境にある海外の企業に対して、日本企業に対するのと同じ感覚でやりとりをしようとしても、うまくいかないケースは少なくありません。そこで、オフショア開発の課題を解消し、円滑な開発を行うための方法について解説します。


▶明確な要件定義を行う


オフショア開発では、開発業者を選択する前の段階で要件定義を行うのが一般的です。そのため、この段階で求める機能、仕様などをできるだけ明確にしておきます。また、翻訳は専門家に依頼し、誤解や齟齬(そご)のないよう徹底して確認を行うことも重要です。


▶コスト削減ばかりを意識しない


コスト削減は、オフショア開発で得られる大きなメリットです。ただし、コスト削減ばかりを意識しすぎると、技術力が伴わない委託先を選択してしまう、高いコミュニケーションコストがかかるといった状況に陥る場合もあります。


開発業者選択の際に、過去の実績を確認することは重要です。同時に、人件費以外にかかる費用を明確にし、予算として計上しておく必要があります。具体的には、打ち合わせで出張する際の交通費、日本と開発先で打ち合わせする際の通信費、委託先の国に拠点を設ける場合の運営設備費などのコストです。


特に、海外とのやりとりでは国内では考えにくいトラブルが発生する可能性もあるため、余裕を持たせた予算組みをしておくとよいでしょう。


▶多様なコミュニケーション手段を用意しておく


コミュニケーション手段をメールやチャットのみにしてしまうと、いざというときに連絡がとれなくなってしまう場合もあります。電話やビデオ通話など多様な手段を用意しておき、柔軟に対応できる体制にしておきましょう。


また、定期的にコミュニケーションをとる習慣をつけておくことも重要です。頻繁に連絡を取り合うことでコミュニケーションがうまくいき、現状把握もできます。そうした関係性を構築することは、突発的なトラブルを回避することにもつながります。


▶委託先の国の文化を理解する


委託先の国の文化を理解し、受け入れることが重要です。日本の商習慣に合っていないからといって相手を責めるのではなく、相手国の文化を理解しようと意識することが円滑なコミュニケーションにつながり、業務の進行が加速する場合もあります。


▶ブリッジSEの選択を重視する


ブリッジSE(システムエンジニア)とは、オフショア開発を円滑に進めるため、自社とオフショア開発先の双方の橋渡し的役割を果たすSEのことです。優秀なブリッジSEの存在があれば、オフショア開発での課題が解消する可能性が高まります。開発を円滑に進めるために、優秀なブリッジSEの選択は欠かせません。


オフショア開発の成功事例


オフショア開発を成功させるには、いくつかのポイントがあります。実際の成功事例を挙げて、いかに課題を解決し成功につなげたかを見てみましょう。


▶日本語を理解できる開発者でチームを構築することで翻訳プロセスの削減を実現


ある企業で、基幹システムの開発を行う際、OSのバージョンアップ対応やテストに手間がかかっていたため、オフショア開発を検討しました。しかし、テスト仕様書が日本語のため、オフショア開発で手間をかけずにテストを行う方法が大きな課題でした。

そこで、オフショア開発先のエンジニアをすべて日本語検定N2以上の人材でチームを編成しました。これにより、仕様書を翻訳するコストを削減し、スムーズな開発を実現しました。


日本語検定N2とは、日本語能力試験の認定レベルで、日常的な場面で使われる日本語が理解でき、より幅広い場面で使われる日本語をある程度理解できる日本語能力とされます。認定の目安は、平易な評論程度の文章の論旨がつかめ、理解できる程度の読解能力と、自然に近いスピードの会話やニュースを聞いて内容や要旨を把握できる聞き取り能力です。


▶システムの運用保守業務をオフショア先に委託して維持コスト削減を実現


ある企業では、システムの運用保守業務でオフショア開発を利用し、維持コストの削減を実現しました。オフショア開発というと、開発業務が主になると考えがちです。しかし、運用保守業務を委託することで、維持コストの削減が実現したと同時に、自社では別の業務にリソースを割けるようになりました。新たな事業の創出準備もできるようになったことが大きなメリットといえるでしょう。


オフショア開発を円滑に進めるポイントはブリッジSEの選択



オフショア開発は、コスト高や国内IT人材不足などの問題を解決し、業務システムやソフトウェア開発を実現します。しかし、委託先が海外になるため、文化や言語、商習慣の違いにより、円滑に進まないケースも少なくありません。場合によっては、国内で開発するより手間もコストもかかってしまう可能性もあります。


そこで重要となるのが、要件定義をできるだけ明確かつわかりやすく伝えること、頻繁にコミュニケーションをとること、相手国の文化や商習慣を理解することです。


さらに、もっとも重要なポイントは、自社と開発業者の橋渡し役を務めるブリッジSEを選択することでしょう。優秀なブリッジSEを選択すれば、こちら側が伝えたいことも明確に伝わり、共通の認識を持って開発を進めていけるようになります。円滑な開発の実現はブリッジSEの選択がカギになるといえるでしょう。