オフショアでアプリ開発を行う際の手順や開発先選択のポイントを解説

2024年8月18日 by
オフショアでアプリ開発を行う際の手順や開発先選択のポイントを解説
ひな


スマートフォンやタブレット向けのアプリケーション市場は、年々増加の傾向をたどっています。総務省公開の「令和3年版情報通信白書」(2021年)によると、国内のモバイルアプリ売上高は2016年の126億ドルから、2020年には259億ドルとほぼ倍増しました。さらに2023年には365億ドルになると予測されています。しかし、国内のIT人材は慢性的に不足しており、今後、需要に応えられなくなる可能性も少なくありません。そこで今回は、人材不足解消策のひとつであるオフショア開発について、アプリ開発の流れや開発先選択のポイントを解説します。 


オフショア開発でよくあるアプリ開発の種類


アプリ開発とは、主にスマートフォンやタブレットなどのモバイル端末で動作するアプリケーションの開発を指します。設計・構築・テスト・保守管理までを含めて開発と呼ぶのが一般的です。


アプリ開発をオフショアで行う理由はさまざまですが、なかでも大きいのは、国内でのIT人材不足です。経済産業省が2019年3月に発表した「IT人材需給に関する調査 調査報告書」によると、2030年にはIT人材が約16万~約78万人不足すると予測されています。


現時点でも人材不足が慢性化しているIT業界で、今後さらにその傾向が顕著になれば、国外での人材活用が欠かせません。そこで、高い技術を持つ海外のIT人材を活用するオフショア開発が注目されているのです。


アプリ開発の種類


アプリ開発にはさまざまな種類があり、主に次のような種類があります。


▶Webアプリ

Webブラウザ上で利用するために開発されるアプリケーションで、パソコンやモバイル端末で動作します。インストールすることなしに使用でき、更新はサーバー上で行われることが特徴です。代表的な例に、メール、チャット、カートシステムなどが挙げられます。


▶スマートフォンアプリ(ネイティブアプリ)

スマートフォンやタブレットなどのモバイル端末で利用するために開発されるアプリケーションで、オペレーションシステム(OS)がiOSとAndroidでは、それぞれの環境向けに開発が必要です。ネイティブアプリとも呼ばれます。代表的な例に、ゲーム、マップ、乗換案内などが挙げられます。


▶ハイブリッドアプリ

Webブラウザ上とスマートフォン(タブレット)のどちらでも利用できるように開発されるアプリケーションです。Webアプリの開発技術があれば、OSの環境別に開発をする必要がありません。代表的な例に、SNSやメールなどが挙げられます。


▶デスクトップアプリ

主にパソコンのデスクトップ環境で利用するために開発されるアプリケーションで、WindowsやMac、LinuxなどのOSに合わせて開発が必要です。それぞれのOSに適したアプリケーションソフトをパソコンにインストールして使用する仕組みです。代表的な例に、業務用、音楽制作、画像加工、動画制作などが挙げられます。


▶IoTアプリ

スマートフォンやタブレットなどのモバイル端末からIoTデバイスを遠隔操作したり、データの収集・分析をしたりするために開発されるアプリケーションです。代表的な例に、エアコンやロボット掃除機、洗濯機のほか、工場や倉庫などの設備や機器で扱うカメラやセンサーなどが挙げられます。


オフショアによるアプリ開発の流れ


オフショアで行う一般的なアプリ開発の流れは次のとおりです。


 1. 要件ヒアリング

どのようなアプリケーションをいつまでに、どのくらいの予算で開発したいのかをヒアリングし、目的を具体的に可視化させます。


 2. 要件定義

ヒアリングした内容をもとに要件定義を行います。具体的には利用目的と必要な機能、スケジュール、予算などを明確化させることが必要です。また、この段階でアプリケーションが動作する対象となるデバイスやOSのバージョンなどの動作環境の確認も行います。

 3. フレームワークの設定

要件定義で決定されたアプリケーションの機能や性能など、要件を満たすフレームワークを選択します。

 4. オフショア開発企業の選択

オフショア開発を依頼する企業を選択します。


オフショア開発の価格相場や国、地域別の比較について詳しくは、「オフショア開発の価格相場は?国や地域別の比較や委託先を選ぶ際のポイントも解説」をご覧ください。


 1. 開発モデルの選択

ウォーターフォール型、アジャイル型など開発モデルの選択をします。大型案件の場合はウォーターフォール型、公開を急ぐ場合はアジャイル型がおすすめです。

開発モデルについて詳しくは、「ウォーターフォール開発とは? アジャイル開発との違い、開発プロセスの流れなどを解説」をご覧ください。


 2. 契約方式の決定

オフショア開発の主な契約方式は、仕様や要件を伝え、開発を完了させる請負型契約もしくは開発専用のチームを編成して開発を遂行させるラボ型契約のどちらかです。ラボ型契約は、開発を請け負うだけではなく、開発後の修正も含め作業をするため、準委任型契約とも呼ばれます。

アジャイル型で開発をする場合は、柔軟な仕様変更にも対応できるラボ型契約、ウォーターフォール型で開発をして納期を明確にしたい場合は、請負型契約がよいでしょう。


 3. 仕様書の作成・開発開始

開発を進めていくための仕様書を作成し、開発先企業とすり合わせを行った後、開発を開始します。


 4. テスト運用

アプリケーションの製作を進めつつ、テストも行います。ここでもあらためて動作環境の確認が必要です。


 5. リリース

テスト運用を行い、問題がなければリリースを行います。保守運用も契約に含まれている場合は、その後も開発先企業と定期的に連絡を取り合い、適切に保守を行います。


アプリ開発のコスト、オフショア開発先選択のポイント


オフショア開発を行うときにチェックしておくべきポイントとして、開発にかかわるコストや委託先の選び方について見ていきましょう。


オフショア開発でかかる主なコスト


オフショア開発で必要となる主なコストは、開発費のほかに、打ち合わせで出張する際の交通費、日本から開発先と打ち合わせする際の通信費などです。開発費は、プログラマー、シニアエンジニア、プロジェクトマネージャーでそれぞれコストは異なります。


たとえば、株式会社Resorz(オフショア開発.com)が公開している「オフショア開発白書 2020年版」によると、中国の企業と契約してオフショア開発をする場合、人月単価をみると、42.09万円(プログラマー)、52.06万円(シニアエンジニア)、85.77万円(プロジェクトマネージャー)が相場です。


その他の国の相場や国別の特徴について詳しくは、「オフショア開発の価格相場は?国や地域別の比較や委託先を選ぶ際のポイントも解説」をご覧ください。


アプリ開発でオフショア開発先を選択するポイント


アプリ開発をオフショア開発先に依頼する場合、開発先企業を選択する際は以下の項目を確認するとよいでしょう。


▶オフショア開発先が開発要件を満たせるか

一般的にオフショア開発の要件定義は国内で行われるため、海外に依頼する際、すべての要件を満たせるかどうかについて、しっかりと確認しなくてはなりません。


▶スムーズな開発が可能な体制が整っているか

開発を円滑に進められる体制が整っているかは重要な確認項目です。価格が安くても、意思疎通が難しかったり、問い合わせの返答に何日もかかったりするようでは、納期に間に合いません。円滑な意思疎通を図るうえでも、自社とオフショア開発先との橋渡しを行う優秀なブリッジSEがいるかどうかの確認も重要です。


▶アプリ開発の実績は豊富か

これまでの実績の確認も欠かせません。これから開発を進めるアプリケーションと同様のものを製作した実績はあるのか、どの程度の規模のものまで開発できるのかなどを確認しましょう。


オフショアでアプリ開発のポイントはブリッジSEの見極め



年々拡大するアプリケーション市場は、売上高も右肩上がりですが、慢性的なIT人材の不足から、今後さらに増加する需要に対応できなくなる可能性も少なくありません。特に今後のアプリ開発は、AIやVR、ARなどの先端IT技術が求められるケースが考えられるため、高度な技術と知識を持った人材を探すとなると、人材不足はさらに顕著になっていくと予測できます。


そのため、アプリ開発を検討する際、国内だけではなく、海外にも目を向けたオフショア開発の重要度は今以上に高まっていくでしょう。


しかし、オフショア開発では、海外のエンジニアとのやりとりが必要となるため、コミュニケーションに課題が発生することを想定しておく必要があります。そこで重要になるのが、ブリッジSEの役割です。アプリ開発のプロジェクトを円滑に進めるためにも、優秀なブリッジSEがいるかどうかが、オフショア開発先選択にとって欠かせないポイントとなるでしょう。