オフショア開発の急増とアジア市場の動向
日本では少子高齢化に伴う労働人口の減少に加え、IT人材の不足が深刻化しています。そのため、多くの企業が海外に目を向け、オフショア開発を導入しています。特に、日本からの距離が近いアジア圏ではオフショア開発が活発に行われており、今後もその需要はさらに増加すると予測されています。
本記事では、日本からのオフショア開発先として注目されるベトナムを中心に、各国の特徴やオフショア開発先を選ぶ際の重要ポイントについて詳しく解説します。特にベトナムを候補地として検討している方は、ぜひ参考にしてください。
オフショア開発先選定時の重要ポイント
オフショア開発先を選ぶ際には、以下のポイントを確認することが重要です。これらを押さえることで、自社に最適なパートナーを見つける手助けとなります。
1. 自社のニーズに合った開発が可能か確認する
契約形態や開発手法が自社の要望に対応できるか確認することが不可欠です。相手に合わせなければならない場合、追加の手間やコストが発生する可能性があるため、慎重な検討が必要です。
2. ブリッジエンジニア費用を考慮する
オフショア開発を円滑に進めるためには、現地エンジニアとの橋渡しを行うブリッジエンジニアの雇用が有効です。そのため、開発先の人件費に加え、ブリッジエンジニアの費用も考慮に入れておく必要があります。
3. 日本企業との取引実績を確認する
過去の取引実績や日本語でのコミュニケーション能力を確認することで、将来のトラブルリスクを抑えることができます。事前に十分な調査を行いましょう。
オフショア開発が注目される理由
オフショア開発とは、企業がWebシステムやソフトウェアの開発業務を海外に委託することを指します。国内で不足しているIT人材を補うだけでなく、日本よりも低コストで開発が行えることから、オフショア開発の導入が増加しています。
IPA(独立行政法人情報処理推進機構)の「DX白書2023」によると、2022年度の調査で49.6%の企業が「大幅に人材不足」と回答し、「やや不足」と合わせると83.5%もの企業がIT人材不足を感じています。さらに、経済産業省の調査では、2030年には最大で約79万人のIT人材が不足すると予測されています。
また、日本よりも安い人件費で開発が行えることもオフショア開発が注目される大きな理由です。近年、アジアでもIT人材の人件費が高騰していますが、それでも日本に比べてコストを抑えられる国が多く、アジアでのオフショア開発は増加傾向にあります。
人気のオフショア開発先とその特徴
日本企業がオフショア開発先として選ぶ地域は、距離が近く時差も少ないアジアが主流です。以下、特に人気の高い国々の特徴と、開発先選定時の注意点を紹介します。
中国
成熟したIT市場と優秀なエンジニアが多く、高度な案件にも対応可能。しかし、人件費が他のアジア諸国に比べて高く、コスト面での注意が必要です。また、中国政府の検閲が強化されており、情報漏洩のリスクも考慮すべきです。
インド
豊富なIT人材と英語力が強みで、コストは日本の2分の1から5分の1程度とされています。しかし、日本文化との違いや時差の影響でコミュニケーションに課題が生じることもあります。
フィリピン
英語力が高く、日本との時差が少ないため、コミュニケーションが取りやすいのがメリットです。しかし、IT技術力は中国やインドに劣る点や、政情不安がデメリットとなります。
ミャンマー・バングラデシュ
人件費が非常に安く、特にバングラデシュはインドの影響を受けた優秀なエンジニアが多いです。しかし、事例の少なさや政情不安、スキルの不足がデメリットとなります。
ベトナムがオフショア開発先として選ばれる理由
ベトナムは、日本からのオフショア開発先として非常に人気があります。その主な理由は以下の通りです。
- 優秀なIT人材が豊富: 国を挙げたIT教育の推進により、今後も優秀な人材が増加すると予測されています。
- 親日国である: 日本に対して良いイメージを持つ国民が多く、コミュニケーションがスムーズです。
- 人件費が安い: IT人材が豊富であるため、日本よりもコストを抑えられる可能性があります。
- 日本語を話せる人材が多い: 日本語教育が盛んで、日本語を理解できるIT人材が多いです。
- 利便性が高い: 日本との時差が少なく、距離も近いため、業務の依頼がしやすいです。
- カントリーリスクが低い: 政治が安定しており、安心して業務を依頼できます。
オフショア開発先選びの最適化
国内のIT人材不足や人件費の高騰を背景に、オフショア開発はますます注目されています。特にベトナムはIT人材の豊富さやコスト面での優位性から、多くの日本企業が選ぶオフショア開発先となっています。
しかし、すべてのベトナム企業が自社に適しているわけではありません。オフショア開発先を選ぶ際は、自社のニーズに合った開発が可能かどうかをしっかり確認することが重要です。自社のニーズを明確にし、適切なパートナーを選びましょう。
参考文献
- DX白書2023 第4部 デジタル時代の人材
- 【2023年】オフショア開発の単価費用の最新動向は?【各国を比較】 |Rabiloo
- 転職動向調査2022年版|株式会社マイナビ
- 【オフショア開発】なぜベトナムが選ばれるのか?|アプリ開発ラボマガジン
- 国際交流基金 - ベトナム(2020年度)
- IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果|経済産業省