オフショア開発先にベトナムが選ばれる理由、開発先選定のポイントを解説

2024年5月7日 by
オフショア開発先にベトナムが選ばれる理由、開発先選定のポイントを解説
Trang Nguyen

少子高齢化による労働人口の減少に加え、IT人材不足の影響もあり、海外に人材を求めオフショア開発を導入する企業が増加しました。特に日本との距離が近いアジア圏ではオフショア開発が活発化しており、今後さらに導入する企業が増加すると予測されています。そこで、日本からのオフショア開発が盛んなベトナムを中心に、アジア各国でのオフショア開発事情と国別の特徴などをお伝えします。特に、オフショア開発の候補地としてベトナムを検討している場合はぜひ参考にしてください。 

オフショア開発先を選択する際に確認すべきポイント


自社ニーズやプロダクトに適した開発が可能かを確認する  


ブリッジエンジニア費用も考慮する

日本企業との取引実績を確認する


オフショア開発が注目される理由


オフショア開発先として人気のある地域



オフショア開発先を選択する際に確認すべきポイント


ベトナムも含め、オフショア開発先を選択する際に確認すべきポイントを解説します。

自社ニーズやプロダクトに適した開発が可能かを確認する  


契約形態や開発手法などを自社の要望に合わせられるかどうかを確認します。相手に合わせなくてはならない状況では、追加的な手間やコストがかかる可能性があるため、十分な確認が必要です。  

ブリッジエンジニア費用も考慮する

  オフショア開発をスムーズに進める施策として、オフショア先のエンジニアと自社との橋渡しを行うブリッジエンジニアを雇うケースも少なくありません。そのため、開発先の人件費に加え、ブリッジエンジニアのコストもあらかじめ考慮しておきます。 

日本企業との取引実績を確認する

過去にどれくらいの日本企業と取引をしてきたか、トラブルはなかったか、日本語でのコミュニケーションに問題はないかなどの確認も必須です。後々のトラブルリスクを抑えるためにも、事前にしっかりと確認しておきましょう。  



オフショア開発が注目される理由

ブートストラップベースのテンプレート

オフショア開発とは、Webシステムやソフト開発などを行う企業が、開発業務を海外に委託することを指します。国内で不足しているIT人材を海外に求めるのと同時に、日本よりも安い人件費で開発を行うことで得られるコスト削減効果を狙って、導入する企業が増加しています。

現在、少子高齢化の影響もあり、日本のIT人材は減少の一途をたどっています。2023年2月にIPA(独立行政法人情報処理推進機構)が発表した「DX白書2023」によると、DXを推進する人材の「量」に関する2022年度調査の結果、49.6%の企業が「大幅に不足している」と回答しています。「やや不足している」と合わせると、実に83.5%の企業が人材不足と答えているのです。

また、2016年に経済産業省が発表した「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果」では、2030年には最大で約79万人のIT人材不足が発生すると予測されています。

日本よりも安い人件費で開発が行えることは、オフショア開発が注目されている理由のひとつです。近年、アジアでもIT人材の人件費は高騰を続けていますが、それでも日本に比べると安く抑えられる国も多く、それがアジアでのオフショア開発増加につながっています。

 

オフショア開発先として人気のある地域

オフショア開発先として選択される地域の多くは日本から近いアジアですが、そのなかでも人気が高い国は次のとおりです。それぞれの国の特徴や、開発先を選ぶ際に注意すべき点を紹介します。 

中国

成熟したIT市場があるため、高度な案件でも対応が可能です。優秀なITエンジニアも多く、求めるスキルを有したエンジニアを集めることもスムーズだといえます。

ただし、ほかのアジア各国に比べ人件費が高いため、コスト高になってしまう可能性があります。

さらに、中国政府が中国国内での海外企業の活動について厳しく検閲行為をする傾向が強まっているため、情報漏洩や思わぬトラブルに見舞われるおそれのあることを意識しておく必要があります。

インド

IT人材が豊富なうえ、英語を使える人材も多く、グローバル案件にも対応が可能です。

インドのオフショア開発のコストはおよそ日本の2分の1から5分の1だといわれます。インドをオフショア開発先に選ぶことはコスト面、人材面においてもメリットがあるでしょう。

政情をみると、外務省の危険情報では、地域によってかなり危険度はことなります。しかし、全体として安定している国だといえるでしょう。

ただし、日本文化との違いや時差が大きいことから、コミュニケーションに難があります。納期の遅れが起こりやすくなる可能性もあり、日程的に余裕を持たせて依頼する必要があります。

フィリピン

フィリピンもインドと同様に、英語力の高さが大きなメリットです。また日本との時差を考えても1時間ほどなので急ぎの連絡を取りたいケースが発生しても、互いのストレスは小さいと考えられます。

IT技術力の点からみると、まだ中国やインドに比べると低いといえます。また、文化の違いや、完成度に対する認識に日本人との差があるともいえます。政情が不安定なためカントリーリスクが高いのが難点といえるでしょう。

ミャンマー、バングラデシュ

ミャンマーやバングラデシュは人件費が安いのが最大のメリットです。

バングラデシュは隣国インドのIT産業の影響を強く受け、優秀なエンジニアが豊富です。高度な案件でも依頼しやすいでしょう。またオフショア開発の単価についても、中国、インド、ベトナム、フィリピン、ミャンマーと比べると低いといえます。

外務省が公開している海外の危険情報ではレベル1(十分注意)の地域が多く、政情不安を懸念して取り引きを見直すレベルとはいえません。

ミャンマーもバンクラディッシュ同様、オフショア開発のコストが低い国です。しかし、デメリットとしては、事例の少なさや、十分なスキルを備えた人材がまだ少ないといった背景があり、扱える案件の幅が狭く、案件によっては対応できない可能性が高いことが挙げられます。さらに、2023年の現状では政情が安定しているとはいえません。外務省の危険情報によると、ミャンマー全域でレベル2(不要不急の渡航中止)からレベル3(渡航中止勧告)となっています。

以上が、アジアでオフショア開発先として人気の高い国です。しかしベトナムは、これらの国以上にオフショア開発先として高い人気を誇ります。


オフショア開発先にベトナムが選ばれる理由

ベトナムは、日本からのオフショア開発先として人気が高い国です。なぜベトナムがオフショア開発先とし人気が高いのか、主な理由は以下のようにあげられます。

  • 優秀なIT人材が豊富

日本貿易振興機構が2021年1月に発表した「ベトナム教育(EdTech)産業調査」を見ると、ベトナムが国を挙げて情報技術教育に力を入れていることがわかります。具体的には、インダストリー4.0に対応した教育を目指し、小学校3年生からコンピューター学習を必須科目にする方針を打ち出しています。また外国語教育にも力を入れており、特に英語教育が盛んです。OECDが15歳を対象に実施している、国際的な学力到達度調査の2015年調査において、ベトナムは科学的リテラシー、読解力、数学的リテラシーの3カテゴリーで、東南アジアではシンガポールに次ぐ成績を収めています。これらのことから、現在はもちろん、今後も優秀なIT人材が増加する可能性が高いといえるでしょう。

  • 親日国であること

ベトナムはアジアのなかでも、日本に対して良いイメージを持つ国民が多いことで知られています。外務省が公表している「海外における対日世論調査」(2021度)の結果を見ると、自分の国にとって重要なパートナーだと思う国はという問いに対し、70%が日本を選択しています。また、68%が自分の国の友邦(互いに親しい関係にある国)として日本を信頼できると回答しています。そのため、コミュニケーションもとりやすく、仕事もスムーズに進めやすいと考えられます。

  • 人件費が安い

ベトナムはIT人材が豊富なうえ、日本よりも物価が安いため、案件によっては日本人のIT人材に比べ人件費を安く抑えられる傾向があります。

  • 日本語を話せるIT人材も多い

地域によっては日本語教育が第一外国語と位置づけられていることもあり、日本語教育は盛んです。独立行政法人国際交流基金の情報によると、ベトナムから日本への留学生数は2019年時点で約7万3千人で、世界第2位、東南アジアでは第1位です。また、2019年の日本語能力試験の受験者数は約7万8千人で世界4位、東南アジア第1位です。これらの結果から、日本語に対する関心も高く、IT人材や関連する企業にも日本語を理解できる人が多いといえるでしょう。

  • 利便性が高い

時差が2時間しかなく、飛行機を使えば6時間で行ける距離にあることは、業務を依頼するには大きなアドバンテージになります。また、日本やほかのアジア諸国よりも祝日が少なく、稼働日数が多いこともメリットといえるでしょう。

  • カントリーリスクが低い

政治が安定しているため、カントリーリスクが低いです。突如クーデターが起こって業務が停止してしまうといった可能性が低いため、安心して業務を依頼できます。


自社ニーズの明確化し、オフショア開発先を選ぶことが重要

近年、国内のIT人材不足や人件費の高騰を解決する手段のひとつとしてオフショア開発は大きな注目を浴びています。

一般的にオフショア開発先として日本から近く時差も少ないアジア諸国が選ばれますが、そのなかでもベトナムでのオフショア開発が注目されています。理由としては、IT人材が豊富で人件費が安い、日本語を話せる人材が多いことなどが挙げられます。

ただし、ベトナムの人気が高いからといっても、すべてのベトナム企業が自社のオフショア開発先に適しているとは限りません。そのため、オフショア開発先を選択する際は自社のニーズやプロダクトに適した開発が可能かどうかの確認が重要です。そのためにはまず自社のニーズを明確化し、何を依頼するのかを可視化させたうえで選択しましょう。


参考

DX白書2023 第4部 デジタル時代の人材

【2023年】オフショア開発の単価費用の最新動向は?【各国を比較】 |Rabiloo

「転職動向調査2022年版」を発表 | 株式会社マイナビ

【オフショア開発】なぜベトナムが選ばれるのか?老舗企業が徹底解説してみた。 | アプリ開発ラボマガジン

国際交流基金 - ベトナム(2020年度)

IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果|経済産業省

IT人材需給に関する調査(概要)|経済産業省


要約文​:

少子高齢化による労働人口の減少に加え、IT人材不足の影響もあり、海外に人材を求めるオフショア開発を導入する企業が増加しました。特にアジア圏でのオフショア開発が活発化しています。今回は、オフショア開発が盛んなベトナムを中心に、オフショア開発先選択のポイントを解説します。


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