「アジャイル開発体制を整えたいけど方法がわからない」
「チームをどのように構成すれば良いのかわからない」
アジャイル開発を検討している方の中には、上記のような悩みや不安を抱いている方もいるでしょう。
アジャイル開発は、柔軟かつ迅速な開発を可能にする手法として注目されていますが、その体制構築は簡単ではありません。
そこで本記事では、アジャイル開発体制を整えるための具体的な手順や役割分担について詳しく解説します。
本記事を読めば、アジャイル開発の体制構築の方法がわかり、プロジェクトをスムーズに進められるようになるでしょう。
アジャイル開発体制を整えることが重要な理由
アジャイル開発体制を整えることが重要な理由は、下記の通りです。
- メンバーの自主性とモチベーション向上
- プロジェクトの円滑な進行
各理由について詳しく解説します。
メンバーの自主性とモチベーション向上
適切な体制が整っていれば、メンバーは自分の役割を理解し主体的に行動できるようになります。自己組織化されたチームが生まれると、組織全体の生産性向上にも繋がります。
一方で、体制が整っていない場合、メンバー間の役割が曖昧になり、責任の所在が不明確になりがちです。
結果、メンバーは自分の貢献が評価されないと感じ、モチベーションが低下する可能性があります。また、指示待ち状態になることで、チーム全体の動きが鈍ってしまう可能性もあるでしょう。
アジャイル開発では、チームメンバーが積極的に意見を出し合い、改善を繰り返す必要があります。
そのため、メンバーが自由に発言できる環境を作ることが大切です。
プロジェクトの円滑な進行
スムーズなプロジェクト進行のためには、役割や責任が明確な体制を整えることが大切です。
体制が整っていない場合、メンバー間で情報が共有されず、同じ作業を重複して行ってしまうといったことが起こりえます。また、責任の所在が曖昧なため、問題が発生した場合に素早い対応ができず、プロジェクトが遅延する可能性も高まります。
体制が整っていれば、各メンバーの役割が明確になります。役割が明確だと、作業の重複や抜け漏れ、情報共有不足が防がれるため、プロジェクトの遅延リスクを軽減できます。
アジャイル開発体制の体制図と役割一覧
アジャイル開発体制の体制図は、以下画像の通りです。
出典:アジャイル領域へのスキル変革の指針|アジャイル開発の進め方(IPA情報処理推進機構)
アジャイル開発手法の1つであるスクラムでは、以下の役割があります。
- プロダクトオーナー
- スクラムマスター
- 開発チーム
各チームの役割について解説します。
プロダクトオーナー
プロダクトオーナーは、アジャイル開発におけるビジネス側の責任者です。
プロジェクトの方向性を決め、プロダクトバックログの管理を行います。
具体的には、優先順位をつけた機能のリストを作成し、チームにその内容を伝え、進捗を管理します。
また、顧客や関係者との連携を保ちながら、プロジェクトの成果がビジネスに貢献するよう導くのも役割の1つです。
スクラムマスター
スクラムマスターは、アジャイル開発の中核を担う役割です。
開発には直接関わりませんが、スムーズに進行できるように間接的にサポートします。
具体的には、仕事がしやすい環境を作るために、相談に乗ったりアドバイスをしたりします。
開発チーム
開発チームは、実際にシステムやアプリケーションを作成するメンバーで構成されており、プロダクトオーナーが示す要件に基づいて機能を開発し、テストや改善を繰り返し行います。
開発チームは、自己組織化されているため、各メンバーが互いに協力し、効率的に作業を進めます。
アジャイル開発体制の構築手順
アジャイル開発においてスクラム手法を選択した場合の体制の構築手順は、下記の通りです。
- 目標と目的の明確化
- チームの構成
- プロダクトバックログの作成
- スプリントの計画
各手順について解説します。
なお、スクラム手法の詳細については、「アジャイル開発にけるスクラムとは?基礎知識から他手法との違いを解説」をご覧ください。
目標と目的の明確化
アジャイル開発は、明確なゴールがないと進捗が曖昧になりがちです。
そのため、具体的に下記のように、目標と目的を明確にしましょう。
- 完成した製品がどのような状態であるべきかを具体的にイメージする
- プロジェクトの成功をどのように測るかを定義する
- 各スプリントで達成したい目標を設定する
- リリースから◯ヶ月後にユーザー数を〇〇人にする
目標や目的が明確であれば、チーム全員が同じ方向に向かって進めるため、無駄な作業を減らせます。
チームの構成
アジャイル開発チームは、プロダクトオーナー、スクラムマスター、開発チームの3つの役割で構成されます。
出典:アジャイル領域へのスキル変革の指針|アジャイル開発の進め方(IPA情報処理推進機構)
各チームの主な役割は、下記の通りです。
- プロダクトオーナー:製品全体のビジョンを担い、製品バックログを管理する
- スクラムマスター:チームが開発をスムーズに進めていけるようにサポートする
- 開発チーム:実際に製品を開発する
開発チームを構築する際には、各メンバーの持っているスキルを把握し、それぞれの不足を補えるようなバランスの取れた体制を目指します。
プロダクトバックログの作成
プロダクトバックログは、開発すべき機能のリストで、プロダクトオーナーが顧客のニーズや市場の動向を踏まえ、優先順位をつけて作成します。
1度作成しただけで終わらず、プロジェクトの進行に応じて、バックログの内容を見直し、優先度を変更していきましょう。
プロダクトバックログを作成すれば、開発チームが何を開発すべきか、優先順位は何かを明確に把握でき、常に重要なタスクに集中できます。
スプリントの計画
スプリントとは、一定期間(1週間〜4週間)で区切られた開発サイクルで、スクラムでよく使われる手法です。
また、スプリント計画とは、各スプリントで行うタスクやゴールを設定する会議のことです。
スプリント計画では、具体的に下記のような作業計画を立てます。
- プロダクトバックログから次のスプリントで開発するアイテムを選び、作業計画を立てる
- スプリント中に完了できる範囲の作業をコミットする
スプリント計画では、前回スプリントの実績を踏まえて今回のスプリントでどこまでの開発を行うのか決定します。開発するアイテムを選ぶだけではなく、タスクに分割するところまで実施しましょう。
また、定期的に振り返りを行えば、計画の改善や、新たな発見に繋げられます。
アジャイル開発体制を構築する際の注意点
アジャイル開発体制を構築する際の注意点は、下記の通りです。
- 役割を明確にする
- 過度なドキュメント作成は避ける
- ベロシティに過度に期待しすぎない
各注意点について詳しく解説します。
役割を明確にする
アジャイル開発では、各メンバーの役割が明確であることが重要です。
各メンバーの役割が明確だと、下記のようなメリットがあります。
- 責任の所在がはっきりし、問題発生時の対応がスムーズに行える
- コミュニケーションが円滑になり、誤解を防げる
- 主体的に仕事に取り組めるので、モチベーションが向上する
アジャイル開発では各メンバーの役割を明確にしたうえで、足りないスキルをチーム内で補いながら進めて行くのが理想です。従来の開発のように、明確な役割分担を行うわけではない点は理解しておくとよいでしょう。
過度なドキュメント作成は避ける
アジャイル開発では、「動くソフトウェア」を重視し、詳細なドキュメントよりも実際の成果物に注力します。
詳細なドキュメントが不要な理由は、下記の通りです。
- 変化に対応するのが難しくなる
- ドキュメントの作成に多くの時間とコストがかかる
- ドキュメントに頼りすぎて、コミュニケーションが不足する可能性がある
上記の理由から、ドキュメントを作成する際は、必要最低限のドキュメントに絞ったり、図や表を活用して複雑な情報を簡潔に伝えたりするようにしましょう。
アジャイル開発における設計書の詳しい作成方法に関しては、「アジャイル開発に設計書は不要?役割や設計書作成のコツを解説」をご覧ください。
ベロシティに過度に期待しすぎない
ベロシティとは、チームが1スプリントに完了できる作業量の目安です。
ベロシティを指標にすることは有効ですが、過度に期待しすぎると、数字を追うことが目的となってしまう可能性があります。また、ベロシティはあくまでも予測であるため、必ずクリアすべき数値ではありません。
ベロシティはあくまで参考値として使用し、チームの状況や外部環境の変化に合わせてベロシティの見積もりを調整しながら高品質な成果を提供できるようにしましょう。
まとめ
アジャイル開発をスムーズに進行させるためには、メンバーの役割を明確にしたうえでの適切な体制構築が必要です。
適切な体制を整えれば、チーム全体のパフォーマンスを最大限に引き出すことができ、アジャイル開発の成功率が向上します。
開発コストを抑えたい場合は、オフショア開発を検討するのも1つの選択肢です。
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