「オフショア開発先としてマレーシアはおすすめできるのか」
「マレーシアでオフショア開発を実施するメリットや課題を知っておきたい」
このように感じているIT部門の責任者や、ITプロジェクトマネージャーの方もいるのではないでしょうか?
マレーシアは、高度な技術力を持ったエンジニアが多い点や多言語開発が可能であることから、オフショア開発の委託先として注目されている国です。
しかし、コスト面やエンジニアの安定的な確保に課題があるのも事実です。
そこで本記事では、マレーシアでのオフショア開発のメリット・デメリットなどを解説します。
最後まで読めば、マレーシアでのオフショア開発が自社にとって最適であるかが判断できるでしょう。
マレーシアのオフショア開発市場概要
マレーシアは、日本との時差が少なく経済が成長し続けている国で、近年オフショア開発先として選択する企業も増えています。
しかし、オフショア開発の人気国ランキングでは1位に入っていないのも事実です。
マレーシアのオフショア開発市場を知るために、下記について解説します。
- マレーシアについて
- オフショア開発先としてのマレーシアの位置づけ
- マレーシアのIT人材の特徴と傾向
マレーシアでのオフショア開発を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
マレーシアについて
マレーシアの概要は以下の通りです。
経済状況 | 2022年には成長率8.7%、2023年は3.7%と下がったもののプラス成長 |
日本との時差 | 1時間 |
面積 | 約33万平方キロメートル(日本の約0.9倍) |
人口 | 約3,350万人 ※2023年時点 |
首都 | クアラルンプール |
公用語 | マレー語(国語)、中国語、タミール語、英語 |
マレーシアは、日本とほぼ同じ面積を持つアジアの国です。日本からマレーシアまでは飛行機で約6時間程度かかりますが、時差は1時間と少ない点が特徴です。
マレーシアの経済状況を見てみると、2022年には成長率8.7%、2023年は3.7%と下がったもののプラス成長しています。
また、2022年時点での1人当たりのGDPは、ASEANの中でシンガポール、ブルネイに続く位置づけで、経済は安定していることがわかります。
出典:アジア大洋州局地域政策参事官室「目で見るASEAN-ASEAN経済統計基礎資料-」(令和5年12月)
オフショア開発先としてのマレーシアの位置づけ
マレーシアはオフショア開発先として人気国の一つではありますが、委託先国別ランキングの上位には入っていません。
順位 | 国 |
1位 | ベトナム |
2位 | フィリピン |
3位 | インド |
4位 | バングラデシュ |
5位 | 中国・ミャンマー |
6位 | ウクライナ |
出典:【2023年最新版】オフショア開発の現状と最新動向|オフショア開発.com
マレーシアは、オフショア開発先として人気の他のアジア諸国と比較すると、人件費が高めであるため選ばれにくいことが影響していると考えられます。
なお、オフショア開発国の人気ランキングについて知りたい方は「オフショア開発先の人気国比較ランキング7選!選ばれている理由も解説」もご覧ください。
マレーシアのIT人材の特徴と傾向
マレーシアでは公用語のマレー語以外にも英語や中国語などが使われているため、グローバルなシステムを開発したい場合に強みがあると言えるでしょう。
また、IMD世界競争力センターが作成したIMD世界デジタル競争力ランキングでは、日本32位に並ぶ33位と、高い技術力があると評価されています。
マレーシアでは国をあげてIT化を進めていることもあり、今後もIT技術はさらに高まると予想されます。
出典:World Digital Competitiveness Ranking 2023
マレーシアを選ぶ主なメリット
オフショア開発先にマレーシアを選ぶ主なメリットは以下の通りです。
- 高度な技術力を持つエンジニア層が豊富
- 英語力と多言語対応能力の強み
- タックスヘイブン
- MSCステータスによる優遇措置
それぞれのメリットについて詳しく解説します。
高度な技術力を持つエンジニア層が豊富
マレーシアには高い技術力を持つエンジニアが豊富にいます。
1996年にはIT化の一環として、MSCという取り組みがスタートしており、国をあげてIT技術の向上に取り組んでいます。
AIやloT、ブロックチェーンを活用した開発も積極的に実施しているため、最新技術を利用したシステム開発も可能です。
英語力と多言語対応能力の強み
マレーシアは、使用言語が複数あるため、多言語に対応した開発ができるエンジニアが多い点も強みです。
具体的には、マレー語以外に、中国語、タミール語、英語といった言語が話せるエンジニアが多くいます。
そのため、グローバル対応のシステムやソフトウェア開発をしたい企業に向いているオフショア開発先と言えます。
コミュニケーションをとる際も、マレー語だけでなく、英語が話せる委託先のほうが、円滑にコミュニケーションを進められるでしょう。
タックスヘイブン
マレーシアには、税制が優遇されるタックスヘイブンという地域があります。
具体的には、マレーシアのラブアンという地域がタックスヘイブンに指定されています。
現地に拠点を構える場合も、タックスヘイブンを上手く活用することで、コストとしてかかる税制面を抑えられます。
MSCステータスによる優遇措置
マレーシアではIT企業を優遇する「MSCステータス」という資格があり、取得した国は以下のような優遇措置が受けられます。
- 最高10年の100%法人税免除、または最高5年の投資減税
- マレーシア資本要件を免除することにより、自由な企業所有形態
- 海外からの資本金導入ならびに海外からの借り入れ自由
- マルチメディア機器の輸入税免除
- マレーシア及び外国人知的労働者の無制限雇用
- 海外からの外資規制の撤廃
マレーシアは上記のようなMSCステータスによって、IT企業の設立や成長を促進しています。MSCステータスにより、IT技術力はより向上していくと予想できるため、マレーシアでオフショア開発を行うメリットとなるでしょう。
マレーシアを選ぶ際のデメリット
オフショア開発先にマレーシアを選ぶ主なデメリットは以下の通りです。
- 諸外国と比較し割高なコスト
- 離職率が高い
それぞれのデメリットについて詳しく解説します。
諸外国と比較し割高なコスト
マレーシアは技術力の高さや経済の成長から人件費は高騰傾向にあるため、他のオフショア開発先と比較するとコスト面でメリットを感じにくいでしょう。
マレーシアの人月単価は20〜40万円程度となっており、これからも技術力が高まっていくことを考えるとさらに人件費は高騰していくことが予想されます。
コスト削減が最も大きな目的であるなら、マレーシア以外の国への委託を検討することをおすすめします。
しかし、多言語開発や高度な技術力があることは間違いないため、高品質なシステム開発を目指している企業は、マレーシアでのオフショア開発がおすすめです。
離職率が高い
マレーシアは離職率が高いと言われており、優秀なエンジニアを確保できてもすぐに転職してしまう可能性があります。
政府が実施している賃金引き上げ対策によって、条件が良い会社があればすぐに転職する人が多いことを視野にいれておかなければなりません。
エンジニアの離職率を抑えるためには、定期的な賃金の見直しや待遇の強化を実施する必要があります。
信頼できる開発パートナーの選び方
信頼できるオフショア開発パートナーを選ぶポイントは以下の通りです。
- 希望する開発ジャンルの実績有無
- コミュニケーション能力
- セキュリティレベル
それぞれの選び方に関するポイントを詳しく解説します。
希望する開発ジャンルの実績有無
オフショア開発先を選定する際には、開発実績を確認することが重要です。特に、開発予定のジャンルに対する実績があるかは、必ず確認しておくことをおすすめします。
開発実績が多いパートナーは、これまでの経験から品質の高さはもちろんトラブル時もスムーズに対応できる可能性があります。
開発実績は開発パートナーの公式サイトで公開されているケースが多いので、ジャンルや規模などをもとに確認しましょう。
コミュニケーション能力
マレーシアでは英語を話すエンジニアが多いですが全員が話せるわけではないため、使用言語やコミュニケーション能力の確認は必須です。
エンジニアとうまく意思疎通ができないと、やりとりに時間がかかるだけではなく、認識齟齬が生まれることで品質が低下するリスクも発生します。
ブリッジSEがいるかどうかも含めて、開発パートナーのコミュニケーション能力や、コミュニケーション手段などを確認しておきましょう。
セキュリティレベル
マレーシアに限らず、国によってセキュリティレベルに違いがあるため、自社の求める基準と合っているか確認する必要があります。
特に機密情報の取り扱いについて、データ暗号化やアクセス制御といった具体的な対策があるか確認しておきましょう。
オフショア開発先に自社のスタッフを派遣して、海外スタッフにセキュリティ教育を実施することも検討することをおすすめします。
マレーシアのオフショア開発導入ステップ
マレーシアでオフショア開発を実施する際の具体的な流れは以下の通りです。
- 開発会社の選定
- 希望要件・仕様の決定
- 見積もりと合意
- 契約・開発開始
各ステップで実施する内容を詳しく解説します。
1.開発会社の選定
まずは、オフショア開発会社の選定を実施します。
オフショア開発にかかる費用や対応ジャンルなどは会社によって異なるため、候補先として複数社を選定しておくことをおすすめします。
おすすめのオフショア開発会社や選定方法については「オフショア開発会社の紹介|リスクを避ける上手な選び方も解説」でも詳しく解説しているのでご覧ください。
2.希望要件・仕様の決定
開発会社の選定が完了すれば、希望条件や仕様を決定します。
開発内容やプロジェクトの目的、希望スケジュールなどを決定して要件書にまとめましょう。
要件定義や仕様書をまとめておくことで、認識の齟齬を防げるようになります。
3.見積もりと合意
希望要件が決定したら選定した開発会社に提出し、費用の見積もりを作成してもらいます。
オフショア開発の費用は委託先によって異なるため、選定時にピックアップした複数社に相見積もりを取ると良いでしょう。
4.契約・開発開始
見積もりに合意すれば、契約書を交わし、開発がスタートします。また、開発開始のタイミングで改めて仕様書の内容を確認しておくこともおすすめします。仕様書に記載していない内容は相手に伝わらないことを前提とし、必要な内容が網羅的かつ詳細に書かれているか確認しましょう。
まとめ
マレーシアは、近年の経済成長やIT技術の向上により、オフショア開発先として人気が高まっています。
高度な技術を持つエンジニアが多い点や、税制の優遇措置が取られている点などが、マレーシアでオフショア開発を実施するメリットです。
一方で、他のオフショア開発国と比較すると人件費が高めで、エンジニアの離職率が高いといったデメリットもあります。
コスト面と技術力のバランスを考えてオフショア開発先を選びたいのであれば、委託先国1位であるベトナムがおすすめです。
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